第46話

『弘人のこと…』


「…」


『怖いなんて…思ったことない…』


ふわふわの髪


耳元に光るピアス


第二ボタンまで外したシャツ


履き潰した上靴


弘人の香水の香り


弘人の弱さ…


『…』


その全部が


愛しいと思ってしまった


「優。」


私は


「本当はあの頃」


最低だった…


「俺が隣にいるはずだった…」


『…』


「見たかったな…小学6年の優も」


《…見たかったな。》


「中学3年間の優も。」


《小学6年生の弘人も、中学3年間の弘人も。》


『…っ…』


「俺が優の隣にいるはずだった。」


ねぇ


「けど」


どうして


「全部達也に持ってかれちった…。笑」


私たち…


『…』


抱きしめる私の腕を掴んで


体を離して


「今更そんなこと」


その冷たい瞳で


「もう、どうだっていいけどな。」


あなたは、笑うの。


「授業、戻れ。」


『…弘人は?』


「俺はいいや。」


顔を背けて


グラウンドを見る弘人


『…』


これ以上は


話したくないって言ってるんだ…

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