第6話

『…』


「優。」


『…っ…』


「…一人にして、悪かった。」


耳元で


小さく呟いた弘人


『…泣』


ねぇ


5年分の距離は


思っていた以上に大きくて


あんなにそばにいたのに


今は


こんなにも遠い


あなたが何を考えているのか


私には


なにもわからない…


『…ねぇ。』


そっと体を離し


背を向けた弘人を


呼び止める


『名字…なんで5年前のままなの?』


あなたは


振り返ることもせず


「母親に捨てられて親父に引き取られた。」


『…え?』


「なんてな。笑」


そんな風に


空っぽな声で笑うんだ…


『…』


掴まれていた腕が赤い


熱が残る


痛みが…



『…最低…』



ねぇ


あの頃


本当に最低だったのは






誰…

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