第20話 片付けられないという現実

僕の部屋はいつも散らかっている。床にはいろいろな物が積み重なり、わずかな足の踏み場を確保するだけで精一杯だ。物が散乱し、片付けろと言われるたびに、どうしてこんなに片付けが苦手なのか、自分でも疑問に思う。


「片付けなさい!」という言葉を何度も聞いてきた。その度に、「今日こそは片付けるぞ」と決心するけれど、いざ始めようとすると、どう片付ければいいのかわからなくなる。どこから手をつければいいのか、何をどう整理すればいいのか、考えれば考えるほど頭の中が混乱してしまうのだ。


床に散らばった本や紙、衣服や雑貨。どれも必要だと思って置いておいたはずのものだけど、今となってはなぜそこにあるのかさえわからない。部屋を見渡すと、その散らかり具合に圧倒され、「どこから片付ければいいんだろう」と途方に暮れてしまう。


たまに、思い切って片付けを始めることもある。「今日は絶対に片付けるぞ」と意気込んで、少しずつ物を片付けていく。床に散らばったものを拾い上げ、引き出しにしまい、必要のないものは捨てる。そんなふうに片付けが進むと、少しだけ達成感を感じることもある。


けれど、気づくとまた部屋は元通り散らかっている。無意識に物を置いてしまったり、出したものをそのまま放置してしまったり。どれだけ片付けても、それを維持することができない。片付けたはずの空間が、あっという間に物で埋め尽くされ、また元の混乱に戻ってしまうのだ。


モノに躓くこともある。片付けている最中に、足元の物に引っかかり、つまずく。そんな自分の姿を見て、「またやってしまった」と思うと同時に、なんだか情けなくなる。部屋を片付けることができない自分が、どうしようもない存在のように感じられるのだ。


「どうして片付けられないんだろう?」。そう自問自答しながらも、答えは見つからない。片付けることができないのは、ただの怠けや甘えではない。自分の中では一生懸命にやっているつもりでも、なぜか結果がついてこない。どうやって片付ければ良いのかが、本当にわからない。


布団もいつも丸まったままだ。朝起きて布団をたたもうと思っても、なぜかそのままにしてしまう。部屋の片隅に丸まった布団を見ながら、「また今日もできなかったな」とため息をつく。何度も「きちんと片付けよう」と思い直しても、やっぱり同じことを繰り返してしまう。


片付けの練習をしても、まるで変わらない。整理整頓の本を読んだり、片付けのコツをネットで調べたりしても、実際にそれを実行するのはとても難しい。知識として理解していても、現実の中でそれを実践することができないのだ。


周りの人からは「もう少し片付けたら?」と言われることもある。その言葉を聞くたび、「自分は何をやっているんだろう」と落ち込む。片付けられない自分が、まるで無価値な存在に思えてくる。


片付けや掃除ができる人にとっては、きっと当たり前のことなのだろう。きちんと整理整頓された部屋で生活することは、彼らにとって普通のことだ。けれど、僕にとってはその「普通」がとても難しい。片付けたいという気持ちはあるのに、それを実行する力が湧いてこない。


無理矢理にでも片付けてみようとすることもある。でも、結果は同じだ。無理矢理片付けた空間は、すぐにまた散らかってしまう。片付けた先から物が増えていき、元の混乱した状態に戻ってしまうのだ。


どうしてこんなにも片付けられないのだろう。自分の部屋の状態を見ながら、そう思わずにはいられない。きっと、片付けの仕方だけではなく、物に対する考え方や、整理整頓に対する意識そのものが、僕には欠けているのだろう。


それでも、少しずつでも変わりたいと思っている。部屋を片付けることができるようになれば、きっと心の中も整理されるだろう。何か新しいことを始める時に、その混乱した部屋が僕を足止めしているように感じることもあるからだ。


片付けや掃除は、僕にとって大きな課題だ。それでも、何度も挑戦し続けるしかない。無理矢理にでも、少しずつでも、整理整頓を学びながら、自分の心の中の混乱も片付けていけたらと思う。時間はかかるかもしれないけれど、少しずつでも前に進んでいきたい。自分のペースで、僕なりに。

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