生きづらくても、生きなきゃいけない僕の暮らし

白鷺(楓賢)

第1話 はじまりの朝

朝が来るたび、僕は目を覚ます。布団の中で、しばらく天井を見つめている。今日も、生きることに理由を探している自分がいる。時計の針がチクタクと刻む音が、心のざわめきと重なるように響いてくる。


統合失調症の僕にとって、目覚めはいつも不安と隣り合わせだ。頭の中に浮かんでくる意味のない声や、妙な感覚が、現実と非現実の境界を曖昧にしていく。けれど、今日はその声がいつもより小さい。何かが違う。そんな小さな違和感が、僕を少しだけ安心させる。


カーテンを開けると、窓の外には穏やかな青空が広がっていた。部屋に差し込む朝日が眩しくて、思わず目を細める。こんな風に、普通のことを感じられる日があると、僕は少しだけ救われた気持ちになる。どれだけ小さくても、希望の光が見えるから。


双極性障害の影響で、僕の気分は激しい波のように上下する。昨日までは底知れぬ暗闇に沈んでいたのに、今日はなんとか浮上してきた。そういう日が続くと、「このまま少しずつよくなるかもしれない」なんて淡い期待を抱く。でも、その期待はたいてい裏切られるのだと、僕はよく知っている。


僕は朝食を取る気力もなく、コーヒーを一杯だけ淹れる。湯気が立ち昇るカップを手に、少しずつ口に運ぶと、ほっと一息つける気がする。こうやって「普通のこと」ができる日がどれだけ貴重か、僕自身が一番わかっている。


学習障害や境界知能のせいで、社会の中で普通に生きることがどれほど大変なことか、僕は痛感している。簡単な仕事も、複雑な人間関係も、僕にとっては障害物競走のようだ。どんなに努力しても、壁にぶつかってしまう。その度に、無力感に襲われる。


だけど、僕は生きている。どうしようもなく、生き続けている。そんな自分を笑いたくなることもあるけれど、やっぱりどこかで「生きていてよかった」と思いたい自分がいる。そんな矛盾を抱えながら、今日も一日を始めようと思う。


「生きづらくても、生きなきゃいけない僕の暮らし」。そう、これが僕の日常だ。小さな一歩でもいい。今日も、自分のペースで歩いていこう。

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