第36話
――虎だ
「落ち着いて下さい。殺すのはマズいです」
なんとか説得しようとする一路さんの声も存在も無視して、若頭はジッと俺を見つめた。
「翔、いいな?」
力強く確認してくる若頭にどうするばいいのか。ここで断れば俺も殺されそうだ。
「翔。これは命令だ」
俺は、戸惑いと諦めの顔をした一路さんをチラリと見た。
そして
「…わかりました」
若頭の目を見て頷いた。
【完】
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