デート

第60話

「悪いな、待たせて。取り敢えず、乗ってくれ」



目の前に止まった高そうな黒い車、その窓から顔を出した壱星に言われ、あたしは助手席に乗り込んだ。



車内は壱星が付けている香水の匂いがした。

色っぽくて大人な感じの。



「悪いな。夜にしか都合つけられなくて……」



運転席の壱星は今日もスーツ姿だった。

喉元を締め付けるネクタイが窮屈そうだと思いながら、



「全然!だって昼間は仕事でしょう?無理なのはわかってるよ」



そう返事を返した。

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