第55話

目があった瞬間動けなくなった。


背筋がゾクゾクしたが、怖いとかとは違う…




「…何…ですか…?」




口から出た声は小さくてかすれていた。



そんなあたしを見つめながら男が口を開いた。




「…名前…」



名前…?



「なんて言うんだ?」



名前聞いてどうするの?



疑問だったが取りあえず名前を教える。




「……イズミ…です」



その瞬間、無表情な顔の中で口元が少し上がり、男が笑いかけてきた。



それに見惚れる。



そんな言葉がふさわしい一瞬。

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