第34話

ホッとした顔で亮太兄が言った。



「よかったね。じゃあ、あたしマンション戻るよ」




「ああ、寄り道せずに帰れよ」




「もぉ、わかってるって!亮太兄も仕事頑張って」




「おうっ」




亮太兄が店の中に入って見えなくなると、タクシーを捕まえるために向きを変えた。




手を上げて通りかかったタクシーを止めようとした



その時、



懐かしい声に名前を呼ばれた気がしてハッとする。




「イ、ズミ……?」




甘さの混じる低音の声……

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