第13話

幸せな事だけ思い出せればいいのに、やっぱり上手くはいかなくて、



切なさと、心の奥底で無視し続ける願いだけが小さく胸を締め付けた。




その切なさも含めて、幸せな夢だった。




夜風に目を閉じる。

そんな私の耳に、人が言い争うような不穏な音が飛び込んできた。




驚いて視線を向けると、チンピラみたいな格好をした金髪の男と、柄の悪そうな男が口論をしていた。



酔っ払い、かな。



関わらないようによけて横を通り抜けようとした時、金髪のほうが相手の胸倉を掴み、拳で殴りつけた。



「…っ」



いきなりの事に驚くあたしの方に、殴られた男が飛んできた。



うっそでしょ…っ



避けれず男と一緒に地面に転がる。



コンクリートを転がる衝撃。




痛い……




なんとか体を起こそうとして、手を地面につくと、ジンっと滲むような鈍痛とともに半袖から出ていた肘が切れていることに気が付いた。



真っ白な頭で、呆然と流れ落ちる赤を見つめた。

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