第11話

「そうね…。見るわ。悲しい夢も幸せな夢も。普段は思い出さないような曖昧な事も、やっぱり覚えているのよねぇ」




昔を思い出しているような遠い目をしながら話す結衣さんを見て、勇気を出して、あたしも口を開いた。




「忘れたい過去を夢に見るのはどうすれば止められるんですかね?」




「たぶん自力ではどうしようもないと思うわ…、時間がたてば自然と見なくなるもの…だけど」



頼りなさそうな苦笑。




時間……

ほんとにいつかは忘れるんだろうか…



幸せな記憶も

辛い記憶も……



風化して、ただの記憶となるのだろうか。







「イズミちゃん、体調悪いなら、今日は無理せず座ってなさい」




幸い、この日は暇だったので、ほとんどをカウンターの中で過ごした。



社会人にもなって、健康管理も出来ないとは。

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