第2話 目覚めた眠り姫
メイナードは静かに頷いて眠り姫の方へ顔を向ける。そして、片手をかざして静かに瞳を閉じた。
風もないのにの髪の毛がふわり、となびき始め、周辺に光の粒が沢山あらわれる。眠り姫自体も輝き始め、姫は光に包まれた。
『その命に息吹を。止まり続ける時間よ動き出せ。汝の輝きに祝福をもたらさん』
そう唱えたヴェルデが瞳を開いたその時。姫を包んでいた光が一瞬強さを増し、次第に光は弱まっていった。
静かに眠り姫を見つめるメイナードとヴェルデ。何も変化が起こらないように思えたが、眠り姫のまぶたがぴくり、と動いた。
眉をしかめ、その瞳は静かに開かれた。その瞳は、何度かまぶたを開け閉めしていたが、ふと横にいるヴェルデたちの気配に気づき、視線をおくる。
パチッと目が合う。その瞳は美しいアメジスト色で、まるで宝石のようにキラキラと輝いていた。あまりの美しさにヴェルデは思わず胸が高鳴る。
(なんて美しいんだ……それに、この人は……)
目覚めた姫に思わず見惚れるヴェルデを見て、メイナードは嬉しそうに微笑む。目覚めた眠り姫は何かを言おうとして口を開くが、すぐに眉をしかめた。
「おはようございます、ずっと眠っていらしたので、恐らく声が出しずらいのでしょう。無理はなさらないでください」
メイナードがそう言って微笑むと、目覚めた眠り姫はぼうっとメイナードを見つめていた。恐らくは見惚れている。それもそのはず、メイナードは王家の中でも抜きんでた美貌の持ち主だ。見惚れてしまうのも無理はない。
「詳しいことはあなたの体調がきちんと回復してから追々お話するとしましょう。今はとにかく無理をなさらないように。それから、あなたを永い眠りから目覚めさせてくれたのはこちらにいるヴェルデです」
メイナードに紹介されて、ヴェルデは静かにお辞儀をする。すると、姫はまた少しぼうっとしてヴェルデを見つめると、優しく微笑んだ。その微笑に、ヴェルデの胸はまた大きく高鳴る。
「ヴェルデ、この方を回復させることはできるかい?」
「完全に、とは言えませんが、しゃべったり起き上がったりすることができるようには」
「今はそれで十分だ」
ヴェルデは姫の片手を優しくつかむ。姫は一瞬驚き顔を赤らめるが、ヴェルデは静かに瞳を閉じ、姫に回復魔法を施す。すると、姫は両目を見開いて驚き、ヴェルデを真剣な目でジッと見つめた。
(そんなに見つめられるとさすがに照れるな)
姫の視線に耐えながら、ヴェルデはメイナードを見て静かにうなずいた。
「どうですか」
メイナードが優しく聞くと、姫はパチパチと瞬きをし、静かに体を起こした。
「あ、の、私は、一体……エルヴィン様、は……?」
「その話は今はまだしない方がいいでしょう。ですが、安心してください。あなたのおかげで殿下は無事でした」
メイナードの言葉に、姫は嬉しそうに目を輝かせ、ほうっと息をつく。
「よかった……」
そんな姫の様子を見て、ヴェルデとメイナードは少しだけ寂し気な、困った顔をしながら目を合わせた。
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