ワイルドビースト

ユウ

ワイルドビースト

プロローグ


 エンジン音に地響きが鳴る。



 スカイライン

 アストロ

 セルシオ

 マークⅡ

 シーマ

 BMW

 RS

 XJ

 GSX

 FX

 CBX

 Z-Ⅱ

 ……原チャリ。



 数えるのが面倒な程の台数のそれらは、校門の前に集合し、そのエンジン音だけで校舎を揺るがす。



 その中でも一際目立つのは、校門の真ん前に鬼止めされた、



 黒のメルセデス。



 興奮と焦りのざわめきの中、昇降口から校門まで歩いて行くと、開けられるメルセデスの後部座席の扉。



 開けられた扉の向こうにいるのは。



 大きく足を広げて



 革のシートに深く座り



 腕を組み



 目を閉じる――…




 …――野獣。



 アッシュブラウンの短いソフトモヒカンは、頭の中央に向って立たせられ。



 整えられた眉と茶色い瞳は、つり上がり。



 筋の通った鼻の下には、薄く口端の上がった唇が存在する。



 車に乗り込むと、一瞬だけその瞳は開き、こちらを捕らえる。




 …あたしは思う。




 あたしはこの野獣の事を知りたい。

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