5,蒼穹の一族

第15話

5、蒼穹の一族



 翌日。俺たちは、セザーニの領地の隅にある、小さな洞窟に来ていた。

 だが、『小さな』なんてのは外側だけ。中はこれでもかというほどの迷宮だった。


 セザーニに雇われた調査員が、また罠を解除する。……罠のレベルが高いのかコイツらの腕が悪いのか、実は今まで五回ほど失敗して怪物をけしかけられた。


「……なあ、こんな遺跡、何があるんだ?」


 何度も繰り返した問いだ。つまり、それだけ返事が無い質問。

 例によって今回も返事は無かった。


 広いホールに到着したのは、俺の槍をはじめ、敵にぶつかる武器が怪物の血でまみれてきた頃だった。


「……皆さん、お強くて助かります。ここまで調査が進んだのは初めてですよ」

 二人の調査員の片方が言う。


「……おい! あったぞ!」


 別の調査員が、広間の隅の柱を調べて言う。もう片方が駆け寄った。


「よし! これで……」


 広間の中央に魔方陣が浮かぶ。光を発し―― 一瞬の後に、そこに一人の男が立っていた。


 かなりの美男子。透けるような肌。そして何より――ゼニス・ブルーの髪。

 ――蒼穹の一族。太古の昔に滅びたと言われる伝説の種族だ。


「……違います」

 ぽつりと呟いたのは、リーリア。

「あの方は生きておられません。幽霊……と言っては御幣があるかもしれませんが」


「蒼穹の守護者よ。我々は貴方の試練に打ち勝ちました。

 どうか、封夢ふうむぎょくをお授け下さい」


「封夢の玉ッ!?」

 ティルが声を裏返す。


 ――封夢の玉。伝説にしか出てこないシロモノ。

 噂じゃあ、それを手にすればどんな願いでも叶うって言われてる。


《……違うであろう?》


 蒼穹の一族の男は、微笑を調査員に返す。そして――


「危ねぇ! 下がれ!」


 俺が叫んだときにはもう遅かった。二人とも、消し炭になる。


《我が試練に打ち勝ったのはそなたらだ。

 ……さあ、最後の試練。我を倒してみるが良い》


 唖然とする俺たちに、そいつは言った。



◇◆◇◆◇

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