金色の魔眼
副島桜姫
プロローグ ―― たった一日の悪夢
第1話
プロローグ ―― たった一日の悪夢
「巫女頭! イリア様!!」
金色の双眸に切迫したものを浮かべ、男がこの祭祀殿(さいしでん)に駆け込んで来る。年の頃は四十の半ばといったところであろうか。よほど急いで走って来たのか、やや白いものの混じりかかった茶色の髪はただ乱れ、声を出す合間には荒げた呼吸音が響いていた。
駆け込んで来たのは、村人だった。彼は、祭祀殿に足を踏み入れると、一息つき――そして、はたと気づいた。
中央の最も大きなものを始めとし、幾つもの祭壇が並べられた空間。壁に半分ほど埋め込まれた柱の列が、高い天井を支えている。祭祀殿に入って、ちょうど正面の奥まった所には、人が一人立てるだけの大きさの祭壇があった。
だが、いつもその祭壇に立っている筈の巫女頭の姿は無く、それどころか常駐している筈の巫女たちの姿すらも見当たらなかった。
――誰も、いない。
駆け込んで来た村人は一瞬唖然とし――やがて目を覚ました様に叫び始める。
「巫女頭! おられないのですか!? 巫女頭!」
叫ぶまでもなく、そこには誰もいない。だが、彼は叫び続けた。
「巫女頭!! イリア様!」
叫びは、聞く者もないまま、かき消える。
狂ったように叫ぶ村人の背後には、既に殺戮が迫っていた。
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