第101話
【ライは知らねえが、各国の歴代王族の記録でも風成は一度使うと身動きできなくなるようなモンだったんだよ】
雪鈴に魔力はないが、義兄に鳥を飛ばすことを教えてもらっていた。魔国で使っていた鳥をもらっていたし、試しに手紙を括って飛ばしたらすぐに来てくれた。
雪鈴の膝で礼竜を寝かしつけて寝台に運び、離れたテーブルで筆談で会話する。
【最初の時にライが二度使ってその状態で呪王倒したし、異常だとは思っていたんだが……エルベットもやっぱそこに目をつけたよな。当然だけどな】
礼竜を見ると、すやすやと寝ている姿は普通だ。
周りに球体が浮いているが。
【何か変なもの仕込まれていませんか?】
それが不安だった。実験動物の末路は悲惨だ。
【さっき俺の魔力で調べたが、毒も薬も出てこなかった。ライも義叔母様が筆頭だったって言ってたし、信じたい】
と書いたのち、
【ここで疑ったら、もう助けようがない】
と書き足す。
礼竜を数秒二人で見詰める。
平和そうに眠っている。
【これからどうなるんですか?】
【わからん。
確かなのは、エルベットはいくら何でもライを使い棄てはしないってことだけだ】
……封祝言のことは流石に言えず、伏せた。
【ライを失いたくないのは間違いない】
黙り込むと、
【これから義祖父様に話聞いてみる。
とりあえずレースのほう、頼む】
そう書いて見せると、今までの筆談の紙を魔力で灰にし、手を振って部屋を去っていった。
「…………」
そっと撫でると、手を伸ばして来て縋り付くように指を絡めてくる。
さらさらとした銀の髪は、本当にヴェールのようだ。
疲れているのか、昨日よりも深く寝ている。
――そういえば。
レースの織り台に向きながら、ふと一人心中で呟く。
……公務が辛いと、礼竜の口から聞いたことがなかった。
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