第68話
「……じゃあ、今ので三日安心……ですか?」
「ああ。三日後には同じ措置だが……
三日間は安心だ」
弟に、自分がこの措置を受けた時には決まって飲んでいる薬草茶を飲ませながら言う。
「今の措置を続ければ妊娠させることはない。
お前さんには傷の痛みがあったが……世間一般では尋常じゃない痛みだ。
あの
自分も同じ薬草茶を飲みながら言う。
心を静めて安定させる薬草が多く入っている。
一般には睡眠薬として出回っている成分が多く、気が付けば眠りにつくようなものだ。
丁鳩の心も尋常ではなかった。
弟に嘗ての自分を見てしまう。
そして、弟がこの先、同じ道を進まされる未来も――
こうなることは分かっていた。分かっていて弟を精通させた。
カスの妙な薬草茶が身体に深刻な影響を及ぼしており、早急に第二次性徴を進めないと男とも女ともつかないものになってしまう――それが医者の診断だったのだ。
「――!」
いつの間にか、中に入っていた薬草茶ごと、陶器のカップを握り潰していた。
「兄様……?」
「あ、悪りい。
……で、どうする? 今夜はこっち泊ってくか?」
「いえ、雪鈴が待っています。
謝らないとだし、心配してくれてるだろうし……安全なら帰ります」
青い顔はそのままに言う弟に、
「そうか。
この部屋はいつでも使っていいから……困ったら来い。
俺が居ないときでも準備させとく」
「はい!」
無邪気に笑う笑顔に、もう痛みしか感じなかった。
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