第18話
「礼竜はとにかく丁鳩に憧れる。
……丁鳩の兄にもな。
二人とも、病気知らずの強健な身体の持ち主だ。
度々二人に、自分の身体を鍛えてくれと言って困らせているよ」
「ま、その時は……あいつにゃ悪いが、最低限の健康維持のトレーニングメニューを渡してるんだけどな」
戻ってきた丁鳩がいつの間にか彼女の横に座っていた。
「これで丈夫になれるってニコニコしてる顔見ると、罪悪感湧くな」
丁鳩も、ファムータルの菓子は彼女のものだと思っているようで、皿の菓子を頬張る。
「先程も言ったが、魔国の王族と交配すると父親の形質は受け継がれない。
つまり――エリシアの遺伝子の半分――劣性遺伝子のみを持ち出したあの子を助けてくれる遺伝子は無かったのだ」
食べかけの菓子をそれ以上頬張る様子はなく、彼女は呆然とする。
「もう13なのに第二性徴もまだまだだ。
このままあの子が成長できるのか、どれくらい生きるのか……分からない」
「第二性徴なら、兆しでたんじゃねぇか? 義祖父様」
丁鳩は彼女の頭に手を置くと、
「恋が始まった」
「……それもそうだな。
姫。礼竜の成長は君にかかっているのかもしれない」
そう期待に満ちた目で言われ、今度は照れ隠しに食べかけの菓子を必死に頬張る。
「ライに接するときの注意点はな……エリシア義母様にそっくりだって言わねぇほうがいい。
昔から、女みたいって言われると過剰反応するんだよ。あいつ」
確かに中性的な容姿ではある。
「分かりました。気を付けます」
「あと、何かにつけて頭撫でてやってくれ。
俺や兄貴がやってもすごく喜ぶから」
言って、丁鳩は彼女の頭をぽんぽんと叩く。
「……こうですか?」
手を高く伸ばし、丁鳩の頭をぽんぽんと撫でる。
「……――!!」
反射的に立ち上がってから正気に戻った丁鳩は、
「わ、悪い。女性にされるの初めてでな」
言い繕ってまた彼女の隣に腰を下ろす。
――親子兄弟は女の好みが似るって本当だったのか?
その自問は、丁鳩のポーカーフェイスの中に消えた。
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