第10話

「丁鳩殿下。

 ……ファムータル殿下は……?」


 昨夜のファムータルによる魔力付与で、生活に支障がないほど回復した彼女が問うと、

「門前に捨ててきた。反省するだろ」

 肩を竦ませながら答える。


「……え……

 で、でも、外は陽射しが!」

 言って駆け出そうとする彼女の手を、丁鳩が掴んで引き留める。


「ライの医者に回収させてる。心配すんな」

「……でも……」

 先程、『ファムータルは色素がなく、陽に当たると肌が灼け爛れて放置すれば死ぬ』と聞かされたばかりだ。


 あの白く儚げな、優しい笑顔を覚えている。ここまでしてくれた恩人への仕打ちに戸惑う彼女の手を丁鳩は引き、


「ま、ゆっくり話そうぜ。義祖父様じいさまも来てる」

 奥の応接室へ案内した。

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