NTR
第12話
梅雨の季節になった。
あれから図書館も行くはずもなく、ルイの彼女と会うこともなかった。
ルイがいなくなって4ヶ月。やっとルイがいない家に慣れてきて。少しだけ自分の心も落ち着いたような気がする。
それでもまだ、ルイが施設から抜け出して家に帰ってくるんじゃないかと思うと怖いて落ち着かない日もある。
包丁を片手に持っている姿を想像すると、眠れない…。
眠れないというよりは、質が浅くなった。
ルイのせいで熟睡ができない。
おかげでいつも寝不足だったりする。
それでもそれが何年も続けば、体は慣れてくるもので。短い睡眠時間でも頭がすっきりするようになった。
多分、ショートスリーパーというものなのかもしれない。
「あの……」
学校からの帰り道、傘をさしながら家まで帰っていると、──家の近くの電柱の横に、ビニール傘をさした人がいた。
黒く、長い髪の女の人だった。
どうやら俺に話しかけてきたらしい。
どこか分からない制服を着たその人は、俺の顔を見るなり「…かみしろさん、ですか?」と言ってきた。
切れ長の瞳に、平均よりは身長が高い、細身の体型。やけに肩周りが細かった。世間で言うスレンダー体型。
奈都って子がかわいいタイプなら、俺に話しかけてきた彼女は美人タイプだった。
彼女は俺を知っているらしいけど、俺は見たこともなく。「……誰ですか?」と首を傾げた。
待ち伏せされている、こういうことは多々あった。主に偶然を装って「ウミくんだ!」という女が多くて、こうして外で会うこともある。
本当にやめてほしい…と思う時もあった。
しかも今回は家の近く。
勘弁してほしい…。
俺の顔はモテる顔らしい。
有名な神城兄弟…。
でも俺はルイに似てるから、自分の顔が好きじゃない。
話しかけてきた彼女は、言いにくそうに視線を下げた。
「……あ、あの、わたし、大黒といいます…」
おおぐろ?
珍しい名字。
聞いたこともなく。
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