第158話

「もう十分でしょ?コウキ…お願い…お願いよ…」


懇願するように繰り返すナナミ。


「……」


そんな…そんなに切ない表情でコウキを見つめないで。


お願いだから、奪わないで。


そう思うのに、そう言いたいのに、言葉が出てこない。


コウキの傍に行きたいのに、まるでその場に縫い付けられたように、足が動かなかった。

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