第88話

「あの、芹沢君?…傘、ないのなら、入る?」


「え――…?あ、相馬さん?」


傘を差し出す彼女


「ど、うぞ?」


雨のせいで、ほの暗い夕方


なのに、そのオレンジの傘が一際明るく彼女を照らした


彼女の明るさが今の俺には眩しかった


「――…いや、大丈夫」



そう断って走って立ち去ろうとした――


「――…待って!!」


呼び止められて…足を止め、もう一度彼女の方に振り向いた



「――…何?」


「あ…」

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