第70話

同窓会前日――――



俺は論文をギリギリで仕上げて教授に渡し、マンションに帰る



はなは研修の準備をしていた




「・・ただいま、」



はなはまた考え事をしていたのか肩をビクンとさせて振り向く




「お、お帰りなさい!早かったね?」




「うん、明日同窓会だし・・・」




「そっか・・、」



「はなは準備できた?」



俺はちらっとはなの部屋を覗く


バッグと他の小物類が散乱していた




「あ、見ないで!散らかってるから、」



はなは部屋から出そうと俺の胸を押す



だけど俺ははなを引き寄せて短いキスをした



「ゴメン、論文に掛かりっきりだったから・・」



はなは首を振る



「大丈夫、アタシは大丈夫だから・・・」




俺は視線を落とすはなを見ていた



「大概のひとは大丈夫じゃない時に“大丈夫”って言うんじゃないかな?

俺ははなが大丈夫には全然見えないよ、」



そう言ったら


はなは俺に抱きついた


いつもより力がこもってて


はなの速い心臓の音を凄く近くに感じた

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