第413話
その後は特に何をするわけでもなかったが
ソファに座って2人きりの空間で、
学校のこと、NiGHTSのこと、最近口にした美味かったもの、椿の煙草の好きな銘柄や、私の好む和菓子について、くだらないけど興味がそそられるような、そんな互いの話をし合えば、思いの外楽しい時間を過ごせた気がした
ふと壁がけの時計を見やれば、もう遅い時間帯に差し掛かっていた事に気づく
それは椿も同様に気づいたらしく
「今日はもう帰るわ」
そう言ってソファから腰を上げた
ググ、と腰を伸ばす仕草をする椿の姿を何となく見入っていれば、椿は流し目で私の姿を捉えた
「寂し?」
態とらしく首を傾ける奴の表情からみてきっと確信犯
思わず眉間に皺を寄せ、奴を睨み付ける
「お前の匂いで満たされてるのこの部屋に、2人きりはやっぱ手、出したくなっちまうからな」
「バカ、シネ。ど変態」
何となく無性に腹が立った私は、奴に目掛けてそこらにあるクッションを軽く投げ付けた
そんな気もないくせによく言ったものだ
口をへの字に曲げたまま恨めしげな私とは正反対に、意地悪少々と優しさ半分の表情で、椿は口を開いた
「そんぐらい言えりゃ、いつも通りだな」
いつもなら口が悪いって説教が始まるところだが、今回はやけに満足そうに頷く
放っておけないと言っていた奴は、本当に心配していてくれてたんだろう
「なぁ、里奈子」
不意に、奴は身をかがめてソファに座ったままの私の耳元に顔を近づけた
視界の片隅で、椿の口角が上がったのを捉える
「次ここ来た時は、カレーが食いたい」
楽しげに呟くようなその声をダイレクトに受ける
…私と奴の、その次があるような何気ない言葉を
「因みに。甘口、な」
「分かった」
奴は案外子供舌なのか、そんな今考えなくても良いような、けれど新たに発見できた奴のことを思いながら私は小さく笑って頷いた
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