第92話

室内真ん中に配置されたベッドに横になっている女



この位置からだと起きてんのかまだ目ぇ覚ましてねぇのか分からないが、


腕や頭や所々に包帯やガーゼが当てられているのが確認できる。



その姿に俺は目を細める。





更に、その先へ視線を移せば、今度はゆっくり眉間の皺を寄せた。



緩やかにかかるウェーブの黒髪から覗かせる日本人離れした端正な顔立ちをしたその男は


ベッド上にいるその女へ優しげな表情を浮かべている




上等なスーツを身に纏い、そこから伸びる手は、

愛しいものへと、大切なものへと扱うようにして


その女の髪へと触れ、自分の口元へと掬った。



「…シロ、」



部屋の外からでも聞こえてくる


甘えるようにその男の名を呼んだ、その女の舌っ足らずな掠れ声に、


俺の周りにいる男達は全員過剰なくらいの反応を見せた。




里奈子ちゃんがシロと呼んだその人物が誰なのか

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