第49話

慎之祐の姿が見えなくなったのを確認し、

路地裏抜けてすぐの大通りの路肩へ停めてるひとつの車へ近づいた。



コツン、助手席の扉をひとつだけノックする。


スモークガラスが車内の住人の顔が僅かにわかる程度に下がる。

そこから顔を覗かせたのは、この街の帝王



「藍」



疲れてるのか、眠てぇのか


両方ともだろうけど、



綺麗な顔はいつも以上に無表情を貼っつけている




「急に悪かったな」


「気にすんな。急ぎなんだろ?」


まぁ待てよ。

そう急かすな。

慎之祐いる手前、相棒とも言える煙草を吸えなかったんだ。


一服させてくれ。それから車に乗るでも遅くねぇだろ



「…急ぎっていえば急ぎだ」



「はっきりしねぇ言い方だな。どうしたよ」


車体に背を預けたまま、藍の様子を不思議に伺う。



「いや、そうじゃねぇけど」


その難しそうな表情はなんだっつうんだ


柄にもねぇ藍のその様子に、眉を寄せ


はらりとタバコの灰を落とす。

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