第86話

「ん…」


冷たくて、口の中も喉の奥も刺激される。


赤色の液体はいちごだったのか。



解けるように口の中で直ぐになくなった。



これはなかなか凄い。


「ふふ」

小さく私は口角を上げる。


少しだけ照れてる陽向からスプーンを返してもらい、私は1口、2口と口に運んで行く。


その冷たさと甘さを堪能していれば、


不意に、ムスクの香水の匂いが強くなる。



「お前、口付いてる」


私と真後ろに座り、あろう事か椿の両膝の間に座っているような体勢になっていた。


覗き込むようにして、奴は私の口元の水分を指で拭いとる。


その動作が妙に甘く綺麗に写る。


「それ気に入ったんか」


ボケっと奴のその行動に固まっていれば、私が握ったままのスプーンを奴はそのまま氷をすくい取り自分の口の中へ運んだ。


傍から見れば食べさせてるようにしか見えない。


「何したいの」


首から上だけをギリギリまで奴に向けて、奴を睨みつける。

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