第74話

藍に連れられて来たのは、海の家のひとつ。


私にはよく分かりかねない、数々の種類の水着が売られている。


子供が着るようなものから大人が着れるものまで。


藍が1歩店の中へ踏み込めば、


ドドド、と数人の水着姿の若い女が我先に押し寄せ話し掛けてくる。


いかにもというような表情と態度が見え見えだ。


普通の男が見れば一瞬で欲を掻き立てられそうなその女たちの水着姿にも、どうでもいいような無表情のまま。


「「「こんにちは〜!いらっしゃいませ!」」」


甲高い黄色い悲鳴とも聞こえるような声が揃う。



この女達はここの店員だったのか。



「お探しの水着とかありますかぁ?」


「どんなものを希望されてるんですかぁ?」



どこから出てるのか分からないような猫なで声。


女たちは、藍の顔はもちろんその奴の水着姿を見ては頬を赤く染めらせキャッキャ騒いでる。



奴は顔だけじゃなくてその体つきも一等級な様だ。


きめ細やかな肌質に程よく引き締まった体は男も女でも誰が見ても憧れるであろう姿だ。



ここに、藍だけじゃなく椿もいたらその倍騒ぎになっていそう。


もはや、女達は藍の後ろで不貞腐れてるように突っ立っているだけの私など眼中にも入ってない様子だ。

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