第54話
私の半歩前を歩く亜貴は至って変わらない。
のらりくらりと、歩いている。
それでも、本当に少しだけ、この空間を眺めれば切れ目の濡れた瞳は熱の籠っている感じがする。
ひとつひとつ、なにかを思い出すかのように。
「ここは、よく来るの」
亜貴にそう問えば、少しだけ顔を私に向けてくる。
藍色のパーマのかかったその髪が少しだけ揺れる。
「俺は3年ぶり」
俺は、ということは他の奴らは来ることもあるんだろう。
既に何本目かの煙草を咥え、「今年は強制参加だっつって藍に言われたんだよ〜」とダラケきったように奴はひとつの部屋に入る。
「りなちゃん!あーちゃん!荷物こっち持っておいで!」
宴会場並の十分すぎる広さの部屋。
少し高台の位置にあるこの旅館。この部屋からは温泉旅行と海の景色が一望できる。
部屋の隅には既に荷物が幾つも置かれていて、
NiGHTSの面子達の荷物なのだと想像がついた。
それでも、まだ部屋の中には数人の面子も残っている。
「りなちゃん、先行ってるから絶対おいでね!」
荷物を置いてあっという間に出掛けられる準備を整えた陽向は、その残りの面子を引き連れて素早く部屋から出て行った。
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