第86話

あらら〜と隣からは楽しそうに眺める亜貴。


「陽向、」

催促するように私は奴の名前を呼ぶ。


一向に私を見る気配もない陽向は、ボソボソと小さく口を開く。

「あーうん。再来週にテストがあるでしょ、それでだよ。てか、りなちゃん、こっちまだ見ないで」


……。


まだ引けない真っ赤な顔を見られたくないらしい陽向。


形から入るって言葉の意味は、そういうことか。



「テストなんてあんの」



知らなかった。


「昨日塩崎ちゃんが言ってただろ〜っつっても里奈子ちゃんサボってたからなぁ〜」


「いつもサボってばかりの亜貴に言われたくない」


ムッとして被せるように私は言い返す。

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