第74話

「あーちゃんのことも、分かってたんだね」


「あれで隠してるつもりなの」


だとしたら奴は演技が下手すぎる。


「ふはっ」


どこに面白い要素があったのか、椿は吹き出すように笑う。


これはめんどくさいからシカト。

「へぇ〜あーちゃんびっくりするだろうな〜」

なんて、陽向はキラキラした目でカクカク足を揺らす。

動作ひとつにしてもこいつはどこか女要素がみえる。



「おい、里奈子。帰るぞ」


ひとしきりに笑った椿は、バイクの鍵を掲げ私の腕を引っ張る。



ようやく、帰れる。


「バイバイ〜またね」


間延びた陽向の声をBGMにしながら私はこの部屋から背を向けた。

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