04.

第32話

あれから私は教室に戻り、午後の授業を受けることにした。

その際、あれだけうるさく話しかけてきてた富浦亜貴と観月陽向は教室にいることはなく気づけば放課後になっていた。



この学校は、年間トータル半分くらいの出席日数と前期中期後期合わせた3回のテストさえ受ければ進級と卒業が可能らしい。

他の学校に比べたら優しいとの事。


私は、高卒の資格が貰えればそれでいい。


放課後ともあって溢れかえる廊下を抜け玄関へ向かう。


「もう帰るの?」

玄関先に壁にもたれ掛かり携帯を弄りながら私に話しかけてきてたのは、午後はずっと教室にいなかった、



「富浦亜貴」


「ん?呼び捨てでいーよ、シノハラさん」


富浦亜貴から出る゛シノハラさん゛は、どこか胡散臭い。絶対的な壁が生じている。どうでもいいことだが。


「暇なら相手してあげましょーか」

靴を履き替えた私にのらりくらりと近寄り、クイッと私の顎をその細い指で持ち上げる。

自然と上目遣いになる私は、ジッと富浦亜貴を観察してみる。

この男、ほんとに高校生には見えない。

大きな切れ目を流し濡れた瞳は、やっぱりこの男の妖艶で普通の人じゃ放てないような色気を加速させている。

これで捨てるほどの女を騙して抱いてきたんだろう。


「間に合ってる」

残念。私はそんなのには騙されない。

「あぁそうですか」

「なんか用あんの。帰りたいんだけど」

奴から目を離し、少し遠くの校門の方へ視線だけ向ける。

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