第65話

実際のところ、由希先輩はなにが言いたかったんだろう。


考えてもわからないけど、由希先輩はなにか言いたげな顔で俺をチラチラと見ている。



でも


「終わったんなら、戻るぞ」


兄貴は由希先輩の肩を抱き寄せて、俺に一瞬だけ目線を向けて、もうそのまま教室を出ようとしている。



いとも簡単に、由希先輩に触れることができる兄貴に俺の中の黒い感情が沸き上がる。


「──兄貴、待って」

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