第55話
「すみません、先輩。わざわざ送ってもらって…」
どうやら先輩の家とは正反対にあるらしいうちまでの道のりを
先輩がわたしの自転車を押しながら二人で歩く。
肩に担いだエナメルのスポーツバッグが重そうで
何度かわたしが持つと声をかけたけど、先輩は譲らなかった。
「俺は男だから大丈夫だよ」
そう言って笑いかけられる度に、嬉しさと切なさが混じる。
好きで好きで、どうしようもなくなる。
わたしなら、先輩にあんな顔させないのに。
なんて、浅はかな考えまでおこしてしまう。
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