第11章

第13話

退社時間を過ぎた社内に、一人の男の足音が響く。


社長の紅林 大樹の姿だ。


退社時間を過ぎ、自ら見回りをしている。


そして、資料室の扉を静かに開けた。


「秋映さん…?」


りんごは、本やノートを広げたまま、寝息を立て静かに眠っていた。


『こんな時間まで、一人で勉強していたのか…』


りんごが書いたノートには、品種ごとの特徴や食べ頃の時期、それらを踏まえて、自ら考えたオリジナルレシピも記されていた。


『凄い…たった一日でこれだけの量を…?』


彼女には、毎回驚かされる事ばかりだ…。


「お疲れ様…秋映さん…」


大樹は、着ていたジャケットを脱ぎ、静かに彼女の背中へ掛けた。


…眠っている彼女は、まるで…白雪姫だ…。


その姿が…余りにも無防備で…。



気付いたら、彼女の唇に僕は、そっと口付けていた…。



りんごの様に赤く、艶やかなその唇に…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る