第34話

あんなことがあっても、御影了の人気は衰え知らずで、今日も他クラスから見物客が押し寄せていた。


「あのクールでミステリアスなところが良い!」と廊下で女子達が話しているのを聞いた事がある。

正直言って理解不能。


わたしだったら、もっと優しくて笑顔の素敵な人がいい。



そんなことをぼんやりと考えていると、朝礼のチャイムが鳴る。

午前8時40分。

櫻井先生が例の如く時間ぴったりに教室に入ってくる。




「おはよう!今日は午後から雨が降るらしい。皆んな傘は持ってきたか?」


「え!まじ!?」


「わたし、折りたたみ傘持ってきてるー」





とりとめのない会話。

ふと、御影了を見ると相変わらず窓際の席で長い足を組み、窓の外を眺めていた。




「えー、それと日高だが、体調不良で暫く休むそうだ。早く治るといいな」



日高さんが?

突然のことに、少々驚いた。


日高さんは1年から水泳部のエースとして有名で、中学の頃から将来を期待されていたらしい。

とても熱心に打ち込み、中学時代も3年間休み無しの皆勤賞だったそうだ。




まぁ、人間だもん。体調だって崩すよね。




その時はそんなふうに取り分け気に留めていなかった。

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