第20話

はぁはぁと息を切らしながら教室に入ると、もうそこでは多くのクラスメイトが一限の準備をし始めていた。

あんなことがあったものだから時間まで気にしていなかったけど、時計を見れば朝礼の数分前だった。続々と生徒達が集まってきている。


息を整えつつ自分の席に座ると、前の席に座る愛里が早々に声をかけてきた。


「おはよー千生」


「あ…おはよー」


図書室での出来事が頭から離れず、つい心ここに在らずで応えてしまうと見透かしたかのように愛里が問いただす。


「んーーー?なに、ぼーっとしちゃって」


「え!別に何でもないよ」


こうゆう時の愛里は鋭い。愛里は人のことをよく見ているし、いつもと違う"何か"がおきればすぐ気づく。それにプラスしてどこから仕入れるのか情報通だから、学校での出来事やクラスメイトのアレコレをよく知っている。

だから、図書室で起きた"あんなこと"、水橋先輩のプライバシーの為にも悟られてはいけないと思った。


「ほんと!気のせい!!愛里ったら勘繰りすぎだよー」


「ふーん。でも千生が遅刻ギリギリなんてめずらし」


「あぁ、寝坊しちゃって。昨日遅くまで本読んでたから。花の首輪って本」


それとない理由をつけたらようやく愛里も納得したようだった。

すると愛里はニヤリと笑いこんなことを口にした。

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