橋の上にて

@imotozirou

橋の上にて

橋があれば、その下には川があるわけで、青年はじっとそれを見ている。ここから落ちると死ぬか?まず間違いなく。

ところで、彼は落ちるために来たのだ。正確には落ちるふりをするために来たのだ。

意味ありげにため息を吐いてみる。誰も見向きもしない。皆、巻貝を耳につけているから。

手摺りに足をかけてみる。誰も見向きもしない。皆、手鏡を見ているから。

結局、彼は帰ってしまう。橋の上では、何も起こらなかった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

橋の上にて @imotozirou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る