それから✩.*˚

第8話

一翔くんと付き合ってから1ヶ月が経った。

 私は今、バイトで占いの館 クルールにいる。お客さんを待っていると、彼が来た。和哉くんと一緒に。


 彼らがここに来たのは、私と一翔くんが付き合ってからは初めてだ。

 彼が入ってきた瞬間、意識を集中させていないのに、とても強い『一翔くんの色』が、私の頭の中に入ってきた。

「ねぇ、唯花ちゃん、一翔の色、凄くない?」

「うん、凄い」

「何? 俺の色って」


 一翔くんに訊かれると、私と和哉くんは目を合わせた。


「なんだ、ふたりの秘密か。なんかイライラする」

「唯花ちゃん、これは内緒だよ!」

 和哉くんがそう言いながら人差し指を自分の口元に当てていた。


 まだ、色と心の言葉が見えることは、一翔くんに打ち明けていない。そして、和哉くんにも秘密にしてね!って言われている。


 言わないことがずっと心に引っかかってモヤモヤしてる。


「和哉くん、ごめん! 私、やっぱり言う!」

「はぁ、やっぱり俺よりも一翔か……」

「うん!」

「唯花ちゃん、そんなにはっきり言わなくても」

 和哉くんが肩を落とした。


「一翔くん、あのね、私ね、人の心の色と言葉が見えるの!」

「えっ?」

 一翔くんは顔をしかめる。


「だから占いをしているの。その能力を発揮出来るのは、占いの館 クルールでだけだけどね。水晶に色々浮かんでくる設定だけど、実はね、その見えた『人の心の中にある色と言葉』を分析してアドバイスをしたりしているの」

 

 そんな不思議な能力なんて、信じないか、気持ち悪がられちゃうかな?


 言いたくない理由は色々あったけれど、それが言いたくなかった1番の理由かもしれないな。そう思われるのが嫌で、嫌われたくなくて。ずっと言えなかった。言うのが怖かった。


「すごいなそれ、特別だな!」


 彼が予想外の言葉を私に――。


 彼からその言葉を聞いた時、私の心の中は真っ白になった気がした。まるで綺麗に浄化されたみたいに。



「じゃあさ、俺は今、何色なの?」

 一翔くんが興味津々に訊いてきた。


 私は和哉くんと目を合わせて「ふふっ」と笑いあった。


「どうしよう、教えよっかな?」

「唯花ちゃん、これは内緒にしとこうよ!」

「また秘密か?」


 和哉くんが私たちふたりを交互に見て、ため息をついてから言った。


「いいなぁ、俺もふたりみたいに、お互い色を浄化しあうみたいな恋人ほしいな!」


 ちなみに、一翔くんが入ってきた瞬間から見えている彼の色は、ピンク色だった。とてもキラキラしていて綺麗なピンク。


 『純粋に恋をしている色』。

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