第60話

若月君は首を振る。


 


「なにそれ、全く覚えてない。そんな事俺に確かめたら良かったんじゃないの?」


 


「そ、そんなの怖くて聞けるわけないじゃない。……恋愛経験ゼロだったんだから。諦めるしかないって思ったし……、」


 


 


「それで?俺は綺以外の誰かと付き合ってた?」


 


「そんな事知らない。」


 


同じクラスになったのは一年生の時だけ。クラスが離れてからは出来るだけ若月君の情報は耳に入れないようにした。


 


「綺は二年の時も三年の時も誰かと付き合ってどっちも違うオトコ連れてたよね。」


 


……なんで、知ってるの……?


 


アタシは若月君と視線を合わせる。


 


「どうして……?」


 


そう言うと彼は首を傾げる。


 


「綺を引きずってたのかもね。」


 


若月君は苦笑いをした。


 


アタシのココロは揺らいでいた。

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