第57話
なんとか声は出せた。
だけど、若月君の返事を受け入れる準備はまだ出来ていない。
「本当の事……って何?」
彼の声に少し怯む。
「綺に対して嘘をついた覚えはないんだけど……。」
「アタシの事なんて好きじゃなかったくせに。」
そう言うと涙が溢れそうになった。
泣きたいとは思わなかった。
だけど自分の意に反して今にも涙が落ちそうになる。
弱いオンナだと思われたくなかった。
少し間があって若月君は首を傾げた。
「好きじゃなかったら付き合ったりしないと思うけど?それを言うなら綺も俺を好きじゃなかった……、」
「好きだった!だから告白したのに!」
アタシは若月君の言葉を遮った。
涙は頬を伝って服に落ちた。
いくつもいくつも――――。
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