オンライン恋愛

第2話

私は、ゆうこ。

年齢は21歳。大学生。

大学に行く日以外は、家の中で引きこもって、オンラインゲームをしている。

髪の色は黒で眼鏡をかけていて、はたから見たら地味な女だろう。

まわりの子はキレイに着飾って大学生活を楽しんでいる。


私は、独りだった。


感染病が世界に広がって、大学もほとんどいかない、すべてがオンラインになって

リモートワークで授業を受けてもよかったので、そうしていた。


私は、孤独だった。

夏だったろうか、もう私には季節感はなかった。


ある日、SNSの広告でオンラインゲームの宣伝が流れてきた。

暇だった私はなにも考えず、インストールした。

出会い系ゲームアプリを。

アバターという架空の世界で私の分身を作り、他のプレイヤーと旅に出る単純なゲームだった。

そこで、ゆうきという男の子に出会った。ゆうきからプライベートメッセージが届き、ゆうきのつれた仲間とともに、強大な敵に立ち向かっていく。

ゲーム内のチャットを通じてゆうきとは会話が増えて仲良くなっていた。

私は京都に住んでいたが、ゆうきは関東に住んでいることを知った。


「今日はゲーム仲間とラーメンを食べに行ったけど、まずかった」

というたわいもない会話がチャット内に流れた。感染病が広がっている世界でも

仲間内のコミニティーを隠してみんな人とつながり会ったりしていた。

私だけが、そのコミニティーから外れていた。

ゆうきの仲間はみんな関東で、私だけが京都だったのもあった。

会話に入れなかったけれど、「たのしそう、私もいつか食べてみたいな」と送信した。

すると、仲間たちは「いつか行こう!」とプレイべートなメッセージを送り連絡先を交換することを提案された。

最初は迷ったけれど、ゆうきの誠実な言葉に説得され、連絡先を教えることにした。

それから、仲間内から外れ、私と、ゆうきは、ふたりで連絡を取り合うようになった。

ゆうこ「こんにちは、今日はどんな日だった?」

ゆうき「今日は仕事。忙しかった。ゆうこはゲームが上手いね、一緒に戦うのたのしい」

ゆうこ「本当に?嬉しい。もっと、ゆうきのこと知りたいな」

ゆうき「今度、関東に来たら、案内するよ!」

ゆうこ「ありがとう、嬉しい」


ゆうきは優しかった。共通のゲームの趣味や、アバターなどの装飾品、好みも同じものが多かった。ゆうきの話す言葉に癒され、安心感を感じるようになっていった。


遠くに離れているのが、さびしかった。

私は、お小遣いを使って、深夜バスで関東に向かった。

ゆうきに会いに。

ゆうきと渋谷で初めて会った。

いまどき流行りの服装をした大学生で23歳だった。

私は、ゆうきが好きだった、そして恋愛経験もほとんどなかった、

だからそのまま、「好きなんだ、ゆうきのこと」と伝えた。

ゆうきは、喜んでくれると思ったけれど、返事は違った。

「俺、好きな子がいるんだ。」

「え・・・そんなこと知らなかった。」

私は、フラれてしまったのだ。

出会って、3か月、今あって初日。

早すぎる恋は、あっけなく終わった。

「でも」

「でも?」

「それでもいいならつきあってもいいよ」

私は好きだった、断れなかった。

だから安易に体を許した。


情緒的な一日だけの恋。

刹那的な甘い誘惑。


ゆうきは、一言だけ私に言った。

「ゆうこのこと、好きかもしれない。」


わたしたちは、夜、抱きあい、朝になって私は笑顔でお別れした。

心にグサグサと棘をさしたまま。


オンラインの出会いは、簡単で難しい。

関東から京都までバスで帰宅中、深いため息が出た。

行くときのような、たのしいわくわくした気持ちはない。


もしかしたら、好きになってくれるかもしれないと思ったけれど、現実はやっぱり甘くはなかった。


それからというもの、ゆうきから連絡はあまり来なくなった。

私は、その現実を受け入れるのが嫌で、オンラインゲームにも行かなくなって大学へ無駄に行った。


ゆうきの仲間も徐々に、ひとりぬけ、ひとりぬけていく。

世界から感染病が無くなって、オンラインゲームが必要なくなったのだ。


ゆうきはオフラインになってから25日目、

仲間に遠回しにメッセージを送り尋ねると、

ゆうきは、もうずっと、数年、元カノのことが忘れられないらしい。

私は、何も言わず、その場から離れることにして、アカウントを消した。


私はまた、アカウントを作り直して、新たな出会いを求めた。

そして、知らない人に抱かれる。

自分で自分を傷つけるかのように。


このゲームから降りられない。


だって、外には私の世界なんてないのだから。



忘れられない彼との刹那的な一日が、私の中に残り続けている。

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