初恋の再開

第1話

私の名前はさくら。小学6年生。

勉強はあまりできない、学校の帰り道には友だちと遊ぶのが好き。

授業が終わった休み時間には校庭に出て、ドッチボールやケイドロなどで遊ぶんでいる。

「さくら、次の休み時間は、かけっこしようよ!」

「いいね!」

みんなが私を囲んで、私もみんなに混ざる。

「さくらって、本当に明るくて優しいよね」

「そうかな?」

私は、男女関係なく仲が良かった。


でも、私の隣の席のあいつは違った。

たくやだ。あいつだけは、みんなの輪に入ってこなかった。


たくやは公立の中学校でなく私立の中学校にいくらしい。

この小学校は公立で、小学校のみんなはだいたい近所の中学校へ上がる。

たくやは運動はそこそこできるけれど、私の方が早かった。

たくやは頭が良かったし、おしゃべりもおもしろい。

でも、たくやだけは、休み時間教室にいて本を読んだり、勉強したりしていて

みんなとの和には入ってこなかった。

たくやは、わたしより背が小さいけれど、たのしかった

しゃべっていると話が面白いし、授業中は邪魔をして話しかけるから

先生に見つかって、怒られたりした。


私の胸が高鳴る、徐々に、好きになってしまった。

でも、そのころには、もうお別れ。


小学六年生、卒業式。

卒業式が終わった後日、みんなで遊園地に遊びにいったけれど、

たくやだけは来なかった。勉強があるとかなんとか。そんな理由だった。


私はそこそこの中学校生活をして高校生になった。

恋愛の「れ」の字もなく、男の子に告白されたりもしたけれど、興味がなかった。

高校へ向かう途中、遅刻をした。

普段は早起きして、運動部の朝練に行く予定だったけれど、

寝坊をしてしまって、学校のみんなとだいたい同じ時間に登下校することになった。

駅の電車を待っているとき、

「見て?あの人、かっこよくない?」

「・・・?」

ふいに他の学校の女子高生たちが、指をさした。

私は何も考えずに、その方向を見た。


背が私よりはるかに高くて、すらっとしている。

キレイな髪に整った顔立ち、ブックカバーをかけた参考書を読んでいる。

どこかで見たことがある、そう、たくやだ。

まわりの大人はスマホをいじっている。

「あれ?たくやじゃん」

「?!・・・あ、さくら。」

たくやは、ポカーンとした顔をしていて、私を見る。

すかさず、私を見てポケットからスマホを取り出して私のスマホ番号を聞いてきた。

「あ、連絡先、そうだよね、久々だし、もう会うことないかもしれないし、交換しよ!」

「うん、ありがとう、学校終わったら連絡する」

たくやは次の駅で乗り換えた。

たくやの学校は中高一貫の男子高校で大学もある、いわゆるエリート様になっていた。

「はぁ~、かっこよくなってるなんて、驚いた・・・別次元の人間だね」

私は、たくやの変わり用に唖然とした。


学校へ行って、部活は今日はお休みした。

ずる休みだ。

放課後の下駄箱で、たくやからの連絡を待っていた。

スマホを何度も見ては連絡がきてないか確認する。

「ま、連絡を聞いてきたのも、社交辞令ってやつかな」

そう思ったその時、連絡がきた。

「今、暇?近所のカフェ来れる?」

私は慌てて返事をする

「いいよ!」

そして待ち合わせのカフェまで向かう。

駅のトイレで身だしなみを整える。

周りの女子高生は茶髪でネイルもしていて短いスカートだ。

鏡にうつった私は、肌は焼けてるしスカートも長い。

せっせとスカートを腰付近で折っていき、スカートのたけを短くする。

普段は化粧もしないけれど、友達から予備にもたされたマスカラをぬって

カフェに向かう。

「よし!」


なぜだか気分は明るくて、たくやに会うのは楽しみだった。

かっこよくなっていた、たくやはカフェの前で待っている。

「ひさしぶり!たくや」

「ああ、さくら、何か食べる?」

久々の会話、久々の再開は、きっとたのしい・・・はずだった。

歴史の話や、数学の難しい問題の解き方の話、ほとんど勉強に関する話ばかりで

まったくわからなくて、つまらなかった。

わたしの学校の男の子の方が話は合うし面白いのでは?と思ってしまった。

私は、わからない話にあいづちを合わせて、話して楽しいふりをした。

嫌だった。好きだったのに、ナニカ、大切なイメージだとか、たくやに対しての気持ちとかが崩れていく感じが嫌だったけれど、私は笑って耐えた。


頭の良さが違うと話がかみ合わないという話を聞いたことがある。まさにそれだ。

そして数年も話してもなかったから、共通の話題もなかった。

気づいた私は、すかさず、昔の友達の話をしたり、飼っていたペットの話をしたり、

映画の話をしたりした。

夕方が終わるころには、私は気疲れでぐったりしていた。

そしてなにより、好きだった男の子が、ぜんぜん好きではない男になってしまったことに動揺して一生懸命、隠した。

何事もなく(?)お別れして家に帰宅した。

たくやからメッセージがきた、「今度は映画に行こうよ」と。

どうしよう。

私は返事を返さなかった。


次の日、友達に相談した。

「え~、あの超有名な高校の男の子なんてどこで出会えるのよ」

「いや、えっと・・・。」

「もったいない!私に紹介してよ」

「それは、ちょっと。」

「え~もったいないよ~、将来、安泰だよ?」

「そういうのじゃないから。さ。そういう目でみて会ったわけじゃないし。」

「とりあえず、もう一回会って見なよ?」

「え、でも。」

「さくら、つりあわなさそうだけど、最後に会ってから決めれば?

あわよくば、お友だちを紹介してくださーい」

「あはは。そっか、別に付き合うとかじゃないもんね、向こうも友だちと会えてうれしいだけかもしれないし、はやとちりしちゃった。てへ」

「あはは、ところで、さっきの授業の先生さ~

・・・」

私は、たくやに「ごめん、ぐっすり寝ちゃって。映画いつにする?」と返事した。

するとすぐに返信が来て、次の休みの日曜日になった。


日曜日、近所の映画館で待ち合わせをする。

男の子と二人で遊ぶのは初めてだった。

「これって、デートっていうのかな?」

そんなことを、考えていたところ、たくやが、待ち合わせの時間のちょうどにやってきた。

たくやはそこそこの良い服をきれいに着こなしていた。

私はというと、ごく一般的な服装。ファッション雑誌にのっているものをそのまま買った感じだ。

「さくらは、小学校の時と変わらないね、明るくて、かわいい。」

私は私なりに変わっているし成長している。と皮肉にも思ってしまったけれど、でも、なんだか昔が懐かしくなった。

映画はたくやが選んだ。なんでも3回も見たお気に入りの映画らしい。

初めてを共有したかったけれど、イイものを探して選んでくれたんだろうと気持ちを切り替えた。

なんだか、私の理想と合わない。

ことごとく、私の普通の違う。

これが恋愛、これが男の子ってやつなんだろうか

なんだか笑ってるのも疲れるし、友だちのままの方が

楽しいのかもしれない。

そうよ、好きだけどきっと、これは男としてじゃなくて、友だちとして好きなのよ。

私は、そう思っって、気分を切り替えた。


私は、映画が終わって帰り道に、告白された。

「俺と付き合ってくれない?」

私のなにがよかったのかまったくわからない。

ムードもなんにもない。

「昔から好きだった」と。


やめて、それ以上、言わないで。


「私も好き・・・だった」と思ったけれど、言葉を飲みこんだ。

私は嬉しかった。とても嬉しかった。


でも、下を向いて出た言葉は、正反対だった。

「・・・ごめん」

私はたくやの顔も見ず、走って逃げた。

たくやは私を追いかけようと手を伸ばしたけれど、私は振り払って逃げた。

私は運動部の陸上部、県大会でも1位、2位を争うほご早かった。

たくやは私に追いつかなかった。

私の気持ちも、現実に追いつかなかった。


「ま、つりあうわけないと思ったけれどな、正解、せいかーい」

次の日、教室で私の女友だちが、私に言った。

「ひどーい!私の頭が悪すぎて話が合わないっていわないでよ」

「あ、わかった?だって、うまくいくわけないじゃん、価値観が違いすぎそうだもん」

「最後にって進めていたくせに」

「あはは、今度、合コン開くからさ、さくらも来なよ」

「えー、遠慮しときますー。」

「なんでだよ、さくらのために開くんだよ。」

それから何事もなかったかのように日々は過ぎていった。


さようなら、私の初恋。

さようなら。

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