第95話

私は担当している施主が画家さんの建設中の現場に来ていた。

外観はほとんど完成していて現在は内装がメインになっていた。


「ねなが此処に来るの珍しいね。」


背後から千秋君の声がした。


「千秋君……、あ、この前は泊めてくれてありがとうございました。」


そう言って頭を下げた。


あの日から数日経っていて彼にまだ御礼も言ってなかった。


「……また他人行儀だね、ねならしいけど。」


千秋君は腕を組んで私を見ていた。


あの時、彼とどうかなっていたら今の自分はどう接していたんだろう。


「す、すごいね、この外観目を引くね。」


千秋君からの返事はなかった。


「ちょっと中も見てみたいから先に行くね?」


「ねぇ、」


歩き始めると千秋君は私を呼び止める。


「同棲の話、考えてくれた?」

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