第29話

「近くまで来たから……って凄い見られてる気が。」


「千秋君、当たり前でしょう?自覚ないんだから。」

彼に合図をするとロビーにある待合ソファに案内した。

私達の姿をロビーを行き交う人達が見るけど主に彼を見ていた。

ラフなジャケットを着ていても綺麗に着こなしている。


「何しに来たの?」

「何しにってちょっと寄ってみた。」

ちょっと寄ってみた?そんな暇人じゃないくせに。

「千秋君は目立つの、少しは自覚して。」


そう言うと千秋君は吹き出す。


「やっと普通に喋ってくれた。仕事モードの時は敬語だから。」

あ、今私は完全に仕事の事を忘れていた。

仕事モードにしなきゃいけない、彼とは一定の距離を置かないといけなかった。


「ねな、彼氏も同じ会社?」


千秋君はそう言って私から視線を外した。

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