第4話 酸っぱいブドウ?

 むかしむかし、あるところに、キツネが一匹おりました。


 ある日、キツネが食べるものを探して歩いていると、ブドウの木が見つかりました。枝には美味しそうなブドウの実が付いています。キツネは喜んでブドウを採ろうとしましたが、手が届きません。飛んだり跳ねたり、努力を重ねましたが、徒労に終わりました。


 すっかりくたびれたキツネ、木の根元からブドウを見上げて言いました。


「あれは酸っぱいブドウに違いない。あんなもの、採って食わなくて正解だ。」


 すると、くすくす笑いが聞こえてきました。ブドウの実が笑っているのです。


「やれやれ、悔し紛れにあんなこと言っている。自分の力が足りないだけなのに、認めたくないんだね。そうやって、自分の失敗の責任や原因をよそに押し付けて、他の奴らは低能だって見下して、俺スゲエ意識も能力も高ぇって自画自賛して。周りから見たらとんだ道化だよねえ。」


 口の悪いブドウです。キツネはムッとしましたが、黙ってその場を去りました。後に残るのはブドウのくすくす笑いだけ。


 ところがどっこい、そのうちにキツネが戻ってきました。顔に何か装着しています。片目用のサングラスに耳当て型の機械がくっついたようなものです。キツネはブドウを見上げると、機械の脇のボタンを押しました。


「ふん、戦闘力pHは2か。やはり酸っぱいブドウではないか。」

「な、何だって…」

「このスカウターがあれば、相手の戦闘力pHなどお見通しよ。ついでに、知性とうども測れるので…ああ、知性とうどはたったの5か。なんて貧相なブドウだ。道理でカラスも突つかぬわけだ。食べなくて良かった。」


 そう言うと、キツネはスタスタともと来た道を帰って行きました。ブドウは何も言えないまま、後に取り残されて寂しく風に揺れていましたとさ。めでたしめでたし。

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