意地悪・溺愛騎士は私が好きor嫌い!?

@B4RS

1.出会いは8歳だもん。

第1話

「トゥリーネ、いらっしゃい」

「はーい。お母様」

部屋で人形遊びをしていたのにお母様に呼ばれたので玄関に向かったらお母様の他に男の人が扉の向こうに居た。

「トゥリーネ、今日からここの当主様のスゥーカ様よ」

「こんにちは。トゥリーネです」

今いるお家の偉い人が代わるらしくスゥーカ様と言う方が当主?になるみたいだったけど私にはよく分からない話だけども領主様に挨拶は絶対だとお母様からと教えてもらったのでお辞儀をします。

「トゥリーネちゃんだね。ウチのサンロシストと仲良くしてやってくれ。サン」

「……?」

領主様に隠れて見えなかったけどブランド髪の毛が見えて顔を上げて背伸びしないと顔が見えなかった。

「チビだなー」

「うっ!」

気にしてるのになんて事言うのこの男の子は!!とムキッとしてしまった。だから言い返したら

お母様は真っ青な顔をして領主さまは笑った。

「チビだからチビって言ってんだ」

「もおー!!ウルサイ!!デカッ!」

「リーネ!!領主様のご子息様になんて…!!」

「あはは。おてんば女の子だ。サンと気が合い

そうだね」

「デカは悪口じゃないよーだ」

「もおっ!!大嫌い!!」

悔しくって涙を溜めて部屋に駆け込んだ。

「なんなの?あの男の子!!」

私より絶対歳上のくせに!!優しいお兄ちゃん

かと思ったら全然優しくない!!プリプリしながらクッションに八つ当たりした。

お母様にはあの後、すごく怒られた。

「ご当主様のサンロシストになんて言い方を」

ですって。

向こうだって、「チビー」って人が気にしてる

事を〜〜っっ。再びクッションに八つ当たりした。

仲良くなんて出来ない。初対面が嫌な男の子認定よっ!!そんな男の子とどう仲良くしろと言うのよっっ?!…またクッションに八つ当。



「よぉ。おはよう」

「………はよう」

お母様…初対面が嫌な男の子認定した子がお母様の用事で玄関開けたら家の玄関前で待ち伏せしているってどんな状況?

そして、“チビー”と私の気にしてる事を言った

男の子は勝手に自己紹介をした。

「昨日、名前名乗ってなかったろ?

俺はサンロシスト・スゥーカ。愛称は、サン」

「………トゥリーネ・ロータ」

自己紹介したから自己紹介を返す。

それは基本で教え込まれた。

愛称まではこんな“チビー”って言った男の子に

教えたくない。

そう思いながら玄関を閉めた。

じゃないとこんな態度を見られたらまたお母様に怒られる。

サンロシストは伯爵で領主の息子。私は男爵。

身分が違うのは8歳の私でもお母様にくどくど言われていて分かってるから失礼な事はこれ以上出来ない様に去ろうと無視して歩こうとしたのに、

サンロシストが謝ってきた。

「昨日はごめん」

「……!!」

「チビって言って……これ」

「………」

急に謝ってきたからあれっ?やっぱり優しい

お兄ちゃんだな…と思ってサンロシストが持っていた花束を素直に受け取ったんだよ。私!!

「きゃあ!!」

「あははは。引っかかりやがったー!!」

「このーー!!」

なのに、受け取ったらかえるがぴょーんと飛び出して来てビックリして悲鳴をあげた。

さっきの気持ち…やっぱり優しいお兄ちゃんと

思った気持ち返してよ!!と思いながらプルプル震えてサンに怒る。

「もう、許さない!!」

「あはははー。こっちだよーーーん」

サンが「べっー」と舌を出して挑発してくるから頭に来て乗っかってあげた。

「待てーーー!!」

サンを追いかけた。お母様の用事を

すぽーんと忘れてしまった。

今は、目の前のこの男の子を追いかけて捕まえる!!のが先だと思ってしまった。


「待てーー」

街中の大人たちが笑って私たちを見ていたけども気にせずにサンを追いかける。

「わあっ」

走っていたら石に躓いて転びそうになった。

「!!」

痛いのを覚悟して目を瞑ったけど、いつまでも

痛いのが来ないから目を開けたら誰かの腕の中にいた。

「大丈夫かっ?どこか怪我してないか?」

「……うん。ありがとう…」

サンが私が転んで痛い思いしない様に

受け止めてくれた。なれっ?なんかドキドキ

してる?心臓が悪い??気のせいね。と自分を

立て直した。

「お母さんの買い物の用事ここだろ?」

「えっ?」

目の前はお母様に頼まれたお店だった。

「どうして……?」

「早く済ませてこいよ」

「うん……」

私は促されて店の中に入る。

「いらっしゃい。あら。リーネ」

「こんにちは。いつものありますか?」

いつものね…と言ってお店のおばさんが用意をしてくれる。

「……」

ふとっ窓の向こうでサンが同じ年齢の男の子と女の子で楽しくお喋りしているのが見えた。

(さっきはビックリした…)

心臓をそっと触った。お父様以外に抱き抱えられた事なんてなかったからビックリしたのとドキドキした…この気持ちに戸惑う。

「サン坊っちゃんと来たんだね」

「坊っちゃん?…サンロシスト様を坊っちゃんって呼んでるのね。…でもとっても意地悪よ」

サンが意地悪した事、石につまづきそうになったけど助けたくれた事を話した。

「そうかね、そうかね?サン坊っちゃんも可愛い所あるね」

「おばさま、可愛いくない。意地悪よ。ところで、どうして坊っちゃんって……」

「リーネが産まれる前に隣の領地もしていたからね。私は前はそこの領地だったけどね…」

そう言ったおばさまの目から涙が流れそうになっていたから手を取って握ったら笑って握り返してくれた。“大丈夫よ”と笑って。

「おばさま?」

「リーネ。楽しく坊っちゃんと遊びな。坊っちゃんもどうして良いか分からないと思うだよ」

「うっ…うん…」

“よく分からない”気持ちになっているのは窓の向こうで楽しく笑っているサンでなく私の気がするけどなぁーと思いながら首を横に傾げる。

「ふふっ。リーネも初めての感情なのかしらね?」

おばさんがそう言った事を聞こえずに私は未だに窓の向こうのサンを見ていた。

「さぁ、お母さんが心配するだろう?お帰り」

「また、来ます。さようなら」

そう言ってお店を出たらサンが女の子と手を繋いで握っていたのを見て嫌な気持ちになる。

「終わったか?トゥリーネ。じゃあな」

サンが私を見て女の子から手を解いて

私の所に向かってくる。

「まだ話してればよいのに」

「?。買い物終わったんだろ?帰ろうぜ」

意地悪するけどこうやってお母様の用事の所まで一緒に走りながら来てくれて私の買い物が終わるまで待ってくれている。

「……サンロシストさん…?どうして…」

帰り道、私は不思議に思ってサンに聞いた。

無礼があってはいけないと思って“さん付け”で

名前を言ったのにサンは、ピタッと足を止めて

私の方を向く。

「いたたたたた」

グッと私の両頬を引っ張る。

「コイツは…俺はサンロシストだけど愛称はサンだ!!そして、同等に話しやがれ」

「しょんなわきゃいかないでしょ(そんな訳いかないでしょ)っていちゃいからはなちて」

「同等で話すって言ったら。そして、

トゥリーネ、愛称教えろ!」

なんて意地悪すぎる!男の子なの?私より絶対

歳上!!

「わ“がっだからはにゃしてー!!」

そう言ってやっとサンは離してくれた。

「よし」

何が「よし」よっ!女の子の頬をグッと

引っ張って笑って意地悪〜〜!!

「改めて自己紹介します。トゥリーネ・ロータ。愛称は…」

「リーネだろ」

「!?」

私の愛称を知っていて女の子の両頬をグッと伸ばして笑ってまでやったこの意地の悪い男の子が

目の前に居る事にまたワナワナ身体が震える。

「サーーーン…」

「あははひひひっ。バーーカ」

「サーーーン!!待ちなさいーー!!」

行きも追いかけたのに帰りも追いかけるってこの男の子に追いつくには体力が無いとダメだと

思ってお家に帰ったら体力強化覚えようと思ったわ。


「はぁ、はぁ、はぁ…」

行きは坂を、下がって行くだけだからいいけど

帰りは坂を上がらないと行けないから息が切れる。

「もお、終わりか?」

「もおー!!ムカつく」

絶対、年下じゃないのは分かる。たった1日で振り回されるってどういう事なんだろう?と不思議に思ってしまったけど登らないといけないから足は止めずにサンに聞く。

「ねぇ、サンはいくつなの?私は8歳よ」

「俺か?15歳」

「ふぅーーーん」

歳上かって分かっただけだから他にこれと言って興味がなかったからそう返答したのに、サンが戻ってきて私の所に来た。

「リーネ!それだけか?」

「えっ?そうだよ。後何があるの?」

「………」

他に何かあるんだろう??と不思議な顔をしていたんだろう。サンが、ため息をついた。

「はぁぁぁぁーー」

「なんか嫌な感じのため息」

「他の女子は色々聞いてくるんだけどな…」

「ふーーーん」

なんだか他の女の子と一括りにして欲しくなかった。

「まぁ、いいや。また明日な」

「??。うん?」

いつもは登るのがキツい坂がサンと一緒だからキツくなかった気がして不思議になった。

「おかえり。リーネ」

「ただいま。お母様」

玄関でお母様が待っていた。

「サンロシスト様と一緒だったでしょ?」

「お母様、どうしてそれを?」

「領主様ですもの。サンロシスト様はリーネを気にかけてくださってるのよ?」

お母様は、私から荷物を取り部屋に入る。

「気にかける?」

「そうね…。サンロシスト様にとってリーネは妹じゃないかしら?」

「妹?じゃあ、サンがお兄ちゃん?」

お母様の言葉をそっくりそのまま受け取ったらお母様の顔が真っ青になる。

「リーネ!!サンロシスト様を愛称で呼ぶなんて!」

「サンが愛称で呼べって…」

パーーンと部屋中に響いて私の右頬がお母様の手で叩かれた。

「領主様のご子息に愛称呼びなんてダメよ!!

伯爵と男爵だと身分も違うのよ?分かってる?」

「……ごめんなさい……」

お母様に怒られて叩かれて我に帰った。伯爵の

ご子息のサンロシスト様に愛称呼びするなんて

失礼にあたるわよね…自分のやっちゃいけない事を忘れていた。

「分かれば良いのよ。失礼があったら貴女が罰を受けるのよ?」

フロータリーニ国の法律で身分の高い者に失礼を与えたら処刑されるという法律がある。身分高い者がそう思って国に報告して調査して…だが大体は身分の高い者の意見が通るので処刑されるのが多い。ただ、身分の高い全員がそういう者ばかりだけではなかった。一部の貴族だけだったがそれが根付いていてビクビクしている領地の住民もいた。

「はい」

「貴女まで失いたくないのよ」

「ごめんなさい…」

トゥリーネ達も前は違う領地の所にいて領主の

態度が傲慢すぎても失礼の無い様にしていたのに、トゥリーネの父親は領主の匙加減で罪のないまま処刑されてしまった。トゥリーネがまだ6歳の時で母親はトゥリーネまで処刑される対象になると他の住民と協力してそこの領主から命からがら逃げて今の所でビクビクしながら生きて来た。

「トゥリーネ、気をつけてね」

「はい」

トゥリーネは母親の腕の中に入って頷いた。


(お母様…私はなんの嫌がらせを受けてるんでしょうか?サンから)

トゥリーネは、毎度毎度とサンから意地悪を受けていた。ある時は、花束にかえると毛虫。

「これ、やるよ」と言って箱をもらって家で開けたら可愛いケーキだったのに、文字は、『チビーチビー』と書かれていた。

「……サンロシスト様は悪戯好きかしら?」

「悪戯の域超えてる!!」

お母様は苦笑いしてるし、私は頭にきて部屋で悪戯を作った。もちろんお母様にはサンに悪戯するのは内緒だけども、お母様にも手伝ってもらった。


「………」

玄関の前でポカーンとしてしまった。意地悪ばかりしてる15歳のお兄ちゃんなのに、身分が違うと分かる。家に門があって大きい白い家。あまりにも違いすぎる身分にノックが出来ないから怖くなった。

「………帰ろう」

そう思って悪戯で作った物を持って踵を返した瞬間名前を呼ばれた。

「リーネ!」

「サン…様!」

「様?敬語はなしだといったはずだ!!」

そう言われてもお母様にまた怒られるかもしれないけど今はお母様がいないから丁寧な言葉を外そうと思い立った。

「サンに会いに来た」

「マジか!入れ」

嬉しそうに言ってきたから少し罪悪感が芽生えて悪戯の物を隠した。

「何持ってるんだ?」

「えっ?これはっ…」

おどおどしていたらサンに取られてしまった。

「いい匂いがする」

「クッキー焼いてきたけど」

「マジか!!早く食べようぜ」

そう言って手を取って繋ぐ。また心臓がドキドキしていた。サンの顔が見れないのは何故?

「俺からもあるよ」

「!!」

身体が反応してしまう。いつ悪戯されるかで反応してるのだろう。

「あははは。身構えろー」

「サーン!!」

「リーネは笑ってる方が可愛いい」

「!!」

急に可愛いと伝えて来てまた心臓がドキンって

鳴った。

「ここで待ってろ」

「うん…」

そう言って手をスマートに離してくれてお客様をもてなす部屋の中に入れられた。お客様をもてなすにもってこいの部屋作りをしていて落ち着く。

「わっ」

ソファーがふかふかしていて気持ちいい。

こんなソファーに、座った事がなかったから

フカフカポフポフと遊んでいたけども、一点に

目がいった。

「これ、なんだろう?」

目に入ったのは棚の上に置かれた一冊の本

だった。

「わあー綺麗」

開けたら空色の色で風景画だった。

「お待た…リーネ!!」

「ひゃあ!!ごめんなさい」

名前を呼ばれて慌てて本を元の位置に戻す。

サンは何かを持ってきていてテーブルに置いて

私の側に来る。

「そんなの見なくって良い」

「サンの?」

「ああっ……」

サンの顔が真っ赤になっていたからもう一回

見たくって本を取ろうとしたらサッと取り上げられた。

「わっ!!」

「なんでもう一回見ようとするんだよ」

「なんでって綺麗な空の色だったから」

綺麗な空の色だったからもう一回見たかったのに取り上げられて手が届かない。届くのに私の身長が足りない。

「見せてって」

「い・や・だ!!」

「み・せ・てっ!!」

2人で言い合いっこをしてバタバタしてたら足が

もつれた。

「わあっ」

「リーネ!!」

本を投げ捨てるサンが見えて手を伸ばしてサンの大事な本を胸の中に入れた。

「!!」

それを更に見ていたサンが慌てて体勢を変えて私の下に入り込み、私を床から守った。

「痛っー」

「こっちのセリフだ」

また、私はサンの胸の中に入っていて抱き止められていた。

「サン!ごめんなさい。でも、本は無事よ」

「……あはは。ありがとう。リーネ」

チュと軽く頬にキスされた気がしたけど一瞬だった。

「早く降りてくれねぇ?重い」

「ひどっ!!重くないよぉー」

大事に本を持っていたらサンから手を差し出されて“立ち上がれ”という意味だったから手を乗せて立ち上がった瞬間に本を取られた。

「もお!サン!!」

「これは無理ー」

サンが背伸びして隙間の場所にその本が置かれてしまった。

気を取り直してソファーに触りサンがお茶を淹れてくれる。お茶はいい匂いで嗅いだことがなく「いー匂い」って言ったらサンは笑っていた。

それから、サンの家にお邪魔する時はこのお茶がいつも出るようになった。

そしてサンからケーキをもらって、開けてみたらそこにはやはりまた『チビーチビー。』と

『重い』が付け加わっていたのを見てイラッと

して悪戯の仕返しでクッキーを渡した。

「辛っっ!リーネ!!」

「あはははは。引っかかったー」

そう。このクッキーは激辛クッキー。意地悪

ばかりしてるから私も意地悪し返すもん!!

見てなさいよ!サンロシスト・スゥーカさん。

底辺にいるロータ男爵のプライドも見せてやるんだから。

そんな事してサンロシスト…愛称・サンとはもう出会ってから2年が経とうとしていて今日が私の10歳の誕生日でサンは17歳で騎士の道を進もう

と決めていたらしい。

9歳の時は帰りに小さい声で「おめでとう」と

言ってくれた。だからこれからもこうやって

祝ってくれる…。

そう思っていたから別に10歳の誕生日で

「おめでとう」と言われても何とも思わなかったの。

この2年で悪戯ばかりだった。かえるは定番。

「来てー」と言われれば行って泥沼にはまって出れなくなってムカついたかサンまで引っ張って

一緒に泥沼に入った。ミツバチの巣を叩いて

ミツバチに怒られたり…あげるとキリがない。

意地悪ばかりするのに優しくしてくれるから調子が狂う。

「ほらっ。リーネ」

と優しく手を差し伸べてくれるからいつまでも

この手を握っていたいと願ってしまう気持ちに分からなくなるけどそれと同じくらいポカポカとあたたかくなる。

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