第70話

「…ちょっ、ちょっと聖歌!」


いきなり涙を流し始めた私を見て、由香はあからさまにオロオロし始めた


「…ごめん、ごめんねぇ、由香。私、バカで……。全然、気付いてなかった……。私、優也の事好きみたい……」


私は、出ない声を何とか絞り出して、涙を拭いながら、そう言った


すると、由香は私を強く抱き締めながら言った


「…もう、良いよ。私の方こそごめん。意地悪して」


私は由香の腕の中でふるふると首を横に振った


「…私、優也くんが聖歌の事、好きなのは、すぐに分かった。で、聖歌が優也くんの事、好きなのも気付いてた。でも、当の本人であるあんたが自覚してないから、いけるかな?って。でも、無理だった。だって、あんたも優也くんも、二人で話してる時、全然、他の人と話す時と表情違うんだもん」


「私は、自分の好きな人に幸せになって欲しいから。だから、優也くんの事、諦める」


私は、由香の腕の中で、また声を絞り出した


「ごめん、ごめんねぇ……ありがとう……」

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