第62話

「あっ。ごめん。歳子。」

とっ歳子?

「俺は、いつだって母上のこと、母上だとは思ったことはない。ずっと黙っておこうと思ってた。だけど、歳子のあんな姿を見て...。」

家久は、歳子にキスをしようとする。歳子は、顔をそらし、

「もうー。家久ったら、朝から冗談言って、」

と言いつつ、動揺している。

「冗談じゃない。」

家久の唇が歳子の唇に触れようとした瞬間、

「信長ーーーッ!」

はっ。 

歳子! 

スッー。

信長は、家久を思いっ切り殴った。

「てめえ!何やってんだよ!」

「何やってんだよ!はこっちのセリフだ!」

家久は、信長を殴り返した。

「歳子ほったらかして、元嫁に会いに行ってんじゃねーよ!」

「それは...。すまなかった。歳子、家久。帰蝶が暴力男と別れるように...いや、言い訳にすぎん。歳子、俺を殴れ。」

「事情が分かったから、いいよ。帰蝶さんのところに行ってあげて。」

「もう、行かない。帰蝶とはもう関係ないってことが分かったから。」

「歳子...母上を悲しませたら、俺がとっちまうからなっ。信長!」

「とらせるかっ。」

「母上、すいませんでした。」

「うっうん。大丈夫だよ。家久。」

家久は、笑いながらその場を去った。

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