黄薔薇

第1話

わたしたちの愛は環視されている。


     *


 今、わたしはコンピュータの音声認識機能に向かって語りかけている。それを、見られている。聞かれている。


 けれどわたしは気にも留めずに話している。そして、言う。「わたしたちの愛は環視されている」と。


 わたしの言葉はわたしのコンピュータに残り、人々の脳を通過する。それでも構わず語り続ける。わたしの言葉は文章として記録され、インターネットの海の中を漂うだろう。わたしがコンピュータにそう命じたからだ。他人にこれを読ませて、どうするかということは考えていない。訴えたいことがあるわけでもない。ただぼんやりとしたつぶやきのようにこれは受けとめられるかもしれない。それでもいい。わたしの目的などどこにもない。ただ、最後まで読めば、わたしがどういう人間で、どういうことを考えていたかはわかるかもしれない。気になるならば最後まで読めばいい。そうではないならここでこの文章を切り捨てても構わない。


     *

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