第94話

「私は満開の桜も好きや」


そう言って花を見上げる真咲様。

この人には咲き誇る花が似合う。


突然の焦燥感に駆られ、真咲様の手を引き抱き寄せた。


あの日から変わらず、私を惹き付けて止まない白い首筋に顔を埋めると、甘やかすように髪を撫でられ、少し腹が立った。


美しく引かれた紅を乱さないようそっと唇を重ねると、甘い香りの吐息が私の理性を崩壊させる。


貪るように唇を奪うと、目を閉じた真咲様が小さく呟く。


「みりお」


昔のようにそう呼ばれた。


「花は散っても、ここに在るのだから」


涙が出そうになるのを堪えていると


「また必ず咲く」


そう言って笑ってくれた真咲様の笑顔が、私にとっては何にも替え難い唯一の花。


「はい」


「来年も、一緒に花見ができると良いな」


「必ず」


この蕾が開いたら、もう一度真咲様と桜を見に来たい。

そう思った。




おわり




まさみりー(ノд<。)゜。

ありがとう!!

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